「線は、僕を描く」2巻 あらすじ・感想
大好きな作品「線は、僕を描く」2巻のあらすじと感想です。
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〜ネタバレあります〜
1巻のラストで、兄弟子・西濱は霜介に「会わせたい人がいる」とドライブに誘いました。
彼らが訪れた先は、水墨画の大巨匠である翠山の家。
大巨匠と聞いて緊張する霜介に、湖山のような人物だから心配ない、と応じる西濱。
そこに現れた翠山は・・・
威圧的な雰囲気と鋭い眼光の老人でした。
霜介が描いた絵を見た翠山は、
「線が泣いている」
と言うと部屋から出て行ってしまいます。
彼を怒らせてしまった、と恐縮する霜介。
しかし翠山は霜介に伝えたいことがあったのです。
アトリエで水墨を描いてみせる翠山。
翠山もまた、愛する妻を亡くしていました。
この時、彼が霜介に向ける眼差しはとても優しいです。
達人が描く揺るぎない線。
蘭の絵に、霜介は悲しみを見出します。
しかし、そこには優しい風が吹き、蘭の葉を揺らしていました。
翠山は、水墨を通して霜介に大切なことを伝えようとしたのです。
礼を言おうとし、思わず喉を詰まらせる霜介。
翠山との出会いから数週間後。
西濱は、緊張の面持ちで湖山と対面していました。
普段の柔和な雰囲気が消え表情が全く読めない湖山。
西濱は湖山の弟子でありながら翠山に指導を受けたことを謝罪します。
厳しい表情のまま、西濱に下がるように告げる湖山。
なんとか破門されずに済んだ、と思う西濱。
大学では水墨画サークルが発足し、部長を任された霜介。
千瑛の指導の元で水墨を学びますが、
霜介は「調墨」がうまくできず悩みます。
そんな霜介に、千瑛は斉藤湖梄(さいとう こせい)から学ぶようアドバイスします。
斉藤は湖山の弟子であり、西濱に並ぶ存在でした。
彼の主催する勉強会に参加することになった霜介。
斉藤は常人離れした技術で、CGのごとく美しい絵を描きます。
しかし、霜介はある違和感を覚えるのでした。
それは斉藤が千瑛のミスを指摘したときのこと。
まるでコンピューターが描いたかのごとく完璧な斉藤の絵よりも、温かみを感じさせる千瑛の絵を魅力的だと思う霜介。
その後、指導を受けるために湖山の家を訪れた霜介は、
信じられない光景を目にします。
千瑛の描いた絵を見る湖山。
その表情は険しいものでした。
自分は良い絵だと思う、と言う斉藤に対して
湖山は
「これが良いと思うのか」
と、とても厳しい答えを返します。
**********
「 線は、僕を描く」には魅力的な人物がたくさん登場します。
一見怖いですが優しい翠山先生もその一人。
個人的には、今回の西濱さんの行動に心を打たれました。
1巻では霜介の送り迎えをしてくれる飄々としたお兄ちゃん、くらいの印象だったのですが・・・
湖山の弟子の中でも屈指の水墨画家であるだけではなく、
ふだんの言動からは想像できないほどの覚悟と情熱を持っている
ことがわかりました。
自分が破門になるかもしれないと知りつつ、霜介のために翠山に教えを乞う姿。
その犠牲を霜介には悟られないようにするところ。
最高にカッコいいと思いました。
そして、1巻ではいつも笑顔で柔和なイメージだった湖山先生が、水墨画家としての厳しい顔を初めて見せます。
それは、弟子たちに水墨とは何かを教えるためでした。
斉藤や千瑛も、それぞれ葛藤を抱えながら水墨を極めようとする。
そして、水墨とは何かを知った霜介は自らのつらい過去と向き合おうとします。
魂を射抜くような湖山先生の眼差しに、
自分が生きることの意味を問われているかのように感じました。
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