shrichangの日記

好きな漫画や小説の感想、オンライン講座、心の健康のことなど書きます。

たまらなく孤独なときに読んだ「線は、僕を描く」

 

うつで会社を休職し、家族や友人とも疎遠でつらかったときに読んだ漫画です。

 

 

 

ある人との出会いをきっかけに再生していく、悲しみを抱えた少年の物語。

 

 

 

線は、僕を描く 1巻

 

  

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〜ネタバレあります〜

 

 

 

 

 

 

 

大学一年生の青山霜介は、バイト先の水墨画展で不思議な老人に出会います。

 

笑顔で人の良さそうな彼は全くの初対面である霜介になぜかお弁当を振る舞い、展覧会の会場へと誘います。

そこではじめて水墨の世界に触れた霜介。

類まれな感性で作品を読み解き老人を驚かせます。

 

その人は著名な水墨画篠田湖山でした。

私の弟子になりなさい

と霜介に笑顔を向ける湖山。 

 

それが、運命の出会いでした。

 

 

マンションに戻った霜介はひとりでカップラーメンを食べています。

 

湖山は自分には手の届かない人間。

自分の居場所はここにしかない。

 

 

一人暮らしの部屋は家具もなくがらんとしています。

ラーメンをすする音が響き、霜介の背中にはどうしようもない孤独を感じます。

 

人当たりがよく、器用で何事もそつなくこなせそうな霜介。

 

まだ彼の抱えている孤独の正体は分からないままですが、

見ているだけで彼の悲しみが伝わってきて

切なくて切なくてたまらなくなったシーンです。

 

 

 

ためらいながらも、霜介は湖山に会いに行きます。

 

そこではじめて水墨画を描いてみることに。

 

自分には水墨なんてできない、と言い張る霜介に

湖山先生の言葉が響きます。

 

 

やってみることが大事なんだ

 

失敗してもいい

 

 

 

気がつくと、無心で筆を振るっていました。

その霜介の横顔は見違えるように輝いていて眩しい

それを真剣な表情で見つめる湖山。

 

その夜、霜介は食料品の買い出しに行きます。

何を食べようか?と思案する顔はどこか楽しそう。

 

はじめての手料理の味はイマイチでしたが・・・

ひとりで食事する彼の背中はもう寂しそうではありませんでした。

 

 

湖山には孫娘がいます。

美しく、才能に溢れて誇り高い千瑛

祖父が自分の絵を褒めてくれないばかりか、何の経験もない霜介を弟子にしたことに苛立ちを隠せません。

 

そんな千瑛と霜介は、水墨画でもっとも有名な湖山賞を目指して競い合うことになります。

当初は霜介に対して敵対心を丸出しにする千瑛でしたが、実際は謙虚で思いやりもある女性でした。

 

苛立っている相手は霜介ではなく自分自身の未熟さだ、と語る千瑛。

 

そんなふたりが仲良くなるきっかけになったのが 霜介の大学の学園祭。

 

千瑛はそこで水墨画の実演をすることになります。

ギャラリーは水墨画よりも千瑛の美貌に目が行き、野次馬のように騒ぎますが

全く心を乱されることなく、普段通りに筆を揮う千瑛

 

凛として美しい姿でした。

 

気がつくと、周囲は静まり返っていました。

 

 

霜介のすった墨があったからこその作品だ、とお礼を言う千瑛。

姉弟弟子としての絆を深めたふたりでした。

 

 

水墨の腕をめきめきと上げていく霜介でしたが、一方で作品からは悲しみが滲み出ている。

そして、彼自身もやつれてきたことを心配する千瑛。

 

ついに霜介の抱える悲しみの原因が明らかになり、彼は千瑛に涙を見せます

 

 

そんな彼を見かねて、霜介と千瑛の兄弟子・西濱が行動に出ます。

1巻の最後では、西濱が霜介をある人に会わせようとするところで終わりました。

 

 

 

 

 

 

この作品を読み返すたびに何度も心が揺さぶられるのは、

 

霜介の抱える孤独や寂しさに共感するから

自分も湖山のような恩師の存在を求めているから

 

だと思います。

 

 

本当は傷ついて孤独でギリギリで助けてほしいのに、

大丈夫なふりをして作り笑いして

普通に学校や会社に通って友達と話したりしている。

 

そんな仮面を剥がして本当の魂に触れてくれる相手を探している。

 

「線は、僕を描く」の湖山先生は、

 

もしかするとそんな人がいるんじゃないか

もしかしたら自分も将来そんな存在になれるんじゃないか

 

そんな気持ちにさせてくれる存在です。

 

 

人間は関係よって病み、関係によって癒される。

という高校時代の恩師の言葉を思い出しました。

 

どんな世代の人にもオススメしたい作品です。